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「和モノ・グルーヴ」

ここ数年、マニアの間で話題なのがこの「和モノ・グルーヴ」だ。

和モノブギー、和モノメロウ、和ジャズ、など日本の歌謡曲とは一線を画す

1960~1980年代前後の洋楽的なサウンドの良作をこう呼んでいる。

中には特に音楽的良作とはいえないが、単にもの凄くレアな音源も含まれる。

今回のテーマはこの「和モノ」で行こう。

当時はやはり何と言っても欧米のポップスが最先端だったせいもあり、洋楽の

影響は大きかった。

特に70年代中盤から80年代前半はジャズ・フュージョンやAOR的なジャジーな

コード進行と16ビート的なリズムが主流だったので、日本のポップスのサウンドも

その流れに乗った作品も多かった。

現在と比べると、好みの問題は別として音楽的なクオリティは高かった。

当時は日本のポップスはいわゆるメインストリームの「歌謡曲」と、フォークや

ロック、あるいはR&B的なサウンドを志向している人たちの「ニューミュージック」というカテゴリーに二分された。

極端に言えば歌謡曲以外はニューミュージックと言われたわけだね。

美空ひばりや北島三郎、和田アキ子や由紀さおり、キャンディーズやピンクレディ

などは歌謡曲。

吉田拓郎や井上陽水、松任谷由実や山下達郎、オフコースやチューリップ、

ゴダイゴやツイスト、果てはチャーやカルメンマキ&OZまでロック系の人たち

まで「ニューミュージック」とカテゴライズされた。

「歌謡曲」の人たちとの違いは、自作自演、いわゆるシンガーソングライター

だったというわけだ。

とは言え、例外もいくつかある。

八神順子や渡辺真知子はヤマハのフォークコンテスト出身のシンガーソングライター

だが、歌謡曲のフィールドに入り頻繁に歌番組に出演した。

サザン・オールスターズも同様だ。

当時はフォークやロックの人たちは自ら歌謡曲のフィールドに入ることを拒み、

TVの歌番組には出演しないという人たちがたくさんいたのだ。

そういうわけで「和モノ・グルーヴ」の中には70年代前後の「ニューミュージック」勢が多数あるのだが、おもしろいのは「歌謡曲」の人たちの洋楽サウンドだ。

普段は日本的な歌謡曲のアレンジ(もちろんこれらも洋楽的なサウンドは多い

のだが)なのだが、時折、何かの間違いのように洋楽チックな「音」になって

いる作品がある。

そこで今回は、そんな普段は歌謡曲のフィールドにいる人が突如洋楽的なシャレた

サウンドになった作品を紹介したいと思う。

1.郷ひろみ「入り江にて」 アルバム「スーパードライブ」より

フルートから入るイントロのメロウグルーブ感と言ったら!

EW&Fの「That's The Way Of The World」と見まごうサウンドw

演奏は当時人気のNYのスタジオ・ミュージシャンの集まり、24丁目バンド

(The 24th Street Band)が担当している。

ウィル・リーとスティーブ・ジョーダンのリズム隊のグルーブが気持ちいい。

特にエンディング、歌が終わりフェイドアウト手前のウィル・リーのベースが

カッコいい!

郷ひろみのボーカル以外、完全に洋楽サウンド。和製AORと言ってもいいだろう。

この作品は残念ながらCD化されていない。

ジャケットデザインは横尾忠則、1979年リリース。

2.山口百恵「喪服さがし」 アルバム「L.A.Blue」より

まるでリー・リトナーの「ジェントルソウツ」かと思うイントロw

郷ひろみはNY録音だったが、こちらはLA録音、当時は多かったんだよね、海外

録音が。

涼しげなD.グルーシンばりのRhodesピアノとリトナーばりのミュートバッキングが印象的なサウンド、グルーシンでもリトナーでもないが。

しかしアーニー・ワッツやスティーブ・フォアマンなど実際のジェントルソウツの

メンバーが参加、この曲のサックスもアーニー・ワッツ。

この曲も百恵さんのボーカル以外完全に洋楽w

この作品はCD化されている。1979年リリース。

3.アン・ルイス「約束」 アルバム「Think! Pink! 」より

これもメロウなサウンドだねぇ!

アン・ルイスはアメリカ人とのハーフで1974年に「グッド・バイ・マイ・ラブ」が

ヒット。その後はロックに転向し「六本木心中」等がヒットした。

現在は芸能界から引退している。

この作品の後あたりからロック化していくんだよね、このアルバムはいろんな

タイプの曲が収録されている、これこそ歌謡曲か。

何曲かシャレたサウンドの作品がある。

この「約束」も良い。メロディーが良いし、Rhodesが効いたコード進行も良い。

まさに「和モノ・ライトメロウ」だ。

1978年リリース。

4.吉田政美「オレンジ・シティの朝」 アルバム「My tune My turn」より

吉田政美(当時は正美)はフォークシンガーのさだまさしとフォークデュオ

「グレープ」で1973年にデビュー。「精霊流し」等のヒット曲を出していたが

1976年に解散、その後はそれぞれソロとなる。

解散後、「茶坊主」というバンドを組むが、これが「グレープ」の頃とは違い

洗練された都会的なサウンドだった。

しかし、グレープのファンからはあまり相手にされなかったんじゃないかなぁ。

あまりにもサウンドが違ってたもん。 それが理由かどうかは不明だが茶坊主は

ほどなくして解散。

その後ソロになり1980年、吉田政美名義でアルバム「My tune My turn」を

リリースする。今回紹介する作品はこのアルバム収録曲だ。

タイトル通り、爽やかな曲。70年代の作品に多くなった転調が多いアレンジ。

サウンドは、何となく前年の1979年のジム・メッシーナのアルバム「オアシス」

に雰囲気が似ている。 

5.間宮貴子「真夜中のジョーク」アルバム「LOVE TRIP」より

最後に紹介する間宮貴子は歌謡曲のフィールドではない。

リリースは1982年、当時のアメリカやイギリスでは80s特有の打ち込み&ロック的

なサウンドに変化している時だ。70年代的なジャジーなコード進行や16ビートも

鳴りを潜め始める頃、AORも終わりの時代だ。

しかしインターネットも無い時代、時間差もあってか日本ではこの後1~2年はAOR的なサウンドがまだ続く。

この間宮貴子「真夜中のジョーク」もそんな和製AOR的作品、いま聴いても十分

ステキな曲だ。

しかしこの間宮貴子、この「真夜中のジョーク」を収録したアルバム「LOVE TRIP」1枚だけで消えた。

その謎な感じもレア感に一役買っているのかも。

しかしこの作品はCD化されているのでそんなにレアではなくなったw

こうして5曲聴いてみると時代背景も違うので同じには論じられないが、現在の

日本のポップスと比べると楽曲、アレンジ、演奏のクオリティのレベルがあまりに

違うことに気づかされる。

一言で言うなら非常に大人っぽいサウンドだったね。

しかし時代が違うんじゃない、こういう時代は終わったのだ、良くも悪くも。

だから全然悲観なんてしていない、今でもおもしろい音楽はたくさんあるから。

願わくば、日本からエキサイティングなポップスが出てくることかな。


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